断熱材の種類と選び方について。グラスウールやウレタンなどを価格や性能で比較!
断熱材とは、住宅の内側と外側の熱移動を防ぎ、快適な住環境を維持するために欠かせない建材のことです。
夏は外からの熱を遮断し、冬は暖かい空気が逃げるのを防ぎ、冷暖房効率の面からも大切な役割を果たしています。
しかし、断熱材選びといっても何が良いのか分からない、というのが実情ではないでしょうか。
この記事では、代表的な断熱材の特徴や性能についてご紹介します。
断熱材の種類
まず、断熱材の種類は「繊維系」と「発泡プラスチック系」に大きく分けることができます。
それぞれ代表的な断熱材をご紹介します。
繊維系断熱材
繊維系の断熱材は、フェルト形状のものが多く、柱と柱の間に断熱材を敷き込み施工していきます。
この工法は充填断熱と呼ばれ、躯体内部の空間を活用するので、省スペース・低コストで断熱材を施工できるのが特徴です。
グラスウール
グラスウールはリサイクルガラスを高温で溶かし、繊維形状にしたもの。
見た目は綿のようにモコモコとしており、フェルト状に成型されます。
最も安価で普及率の高い断熱材です。
ロックウール
玄武岩などの岩石を原料とし、溶融して鉄分を抜いたものを高炉スラグと呼びます。
この高炉スラグを高温で液状化し、遠心力で吹き飛ばしながら繊維状にしたものがロックウールです。
セルロースファイバー
セルロースファイバーの原料は、ダンボールや古新聞。
細かく砕いて難燃剤を添加し、綿状にしたものをスプレーで吹き込み施工する断熱材です。
聞きなれない断熱材ですが、アメリカでは約60年の実績があり、自然素材であることからも注目されています。
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羊毛断熱材
ウールからつくられる天然繊維の断熱材です。
薄いウールの層を何層にも重ね、空気を含ませ、熱で接着。ロール状に成型します。
断熱性以外にも調湿性があり、結露しにくいといわれている断熱材です。
発泡プラスチック系断熱材
発泡プラスチック系の断熱材は、ボード形状のものが多く、充填断熱と外張り断熱工法の両方で使われています。
外張り断熱工法は、躯体外側から断熱材で覆う工法です。
すき間なく断熱材を施工できるメリットがありますが、コストは高い傾向にあります。
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
ビーズ法ポリスチレンフォームは、ポリスチレン樹脂や発泡剤などを混ぜたビーズを発泡させ、金型に流し込み、加熱してさらに発泡させます。
私たちの暮らしの中では、「発泡スチロール」としておなじみですが、断熱材として使われることもあります。
押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
ビーズ法ポリスチレンフォームと同じ材料でつくられますが、金型は使わず、押出法で板状に成型される断熱材です。
水や圧力に強いので、床から天井、壁まで幅広く用いられています。
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発泡ウレタン
発泡ウレタンには板状のものと、スプレーで吹き付け施工するものがあり、板状の硬質ウレタンフォームは、RC造から木造まで幅広く対応できる商品があります。
吹き付け施工の発泡ウレタンは、自己接着性という性質を持っており、金属やコンクリートなどにもぴったりと接着します。
すき間なく断熱材を施せるのがメリットです。
断熱材の価格について
断熱材はフェルト、マット、ボードなど様々な形状があり、充填断熱や外張り断熱など工法によっても価格が大きく変わります。
その為、断熱材の価格は比較しづらい部分もありますが、価格比率で比較するとおおよその目安になります。
最も安価なのは、グラスウールとロックウールです。
約40坪の住宅で1棟当たり約25~30万円の費用が目安になるでしょう。
次に安価なのがポリスチレンフォーム(ビーズ法・押出法)です。
グラスウールの約2倍の価格で1棟当たり約50~60万円に。
天然繊維系の羊毛断熱材も同額程度の予算感になります。
次に発泡ウレタンが続きます。
ウレタン吹き付けがグラスウールの約2.5倍。1棟当たり約65~75万円。
ウレタンボードの場合はグラスウールの約3倍の価格になります。
1棟当たり約75~90万円が目安となるでしょう。
最も高価なのがセルロースファイバーです。
価格比率は約4倍となり、1棟当たりの価格は100万円前後と高額な費用になることも。
しかし、断熱材は最も費用をかけるべき部分とも言われています。
たとえ安くても、引き換えに住宅の寿命を縮めることになっては意味がありません。
断熱材選びは価格だけでなく、性能を比較することも大切です。
断熱材を性能と価格で比較
熱伝導率
寒さを防ぐのが断熱と思われがちですが、夏の暑さを遮断するのも断熱材の役割です。
その指標となるのが熱伝導率。
熱伝導率は数値が低いほど熱を伝えにくくなり、断熱性能が高いことになります。
全般的に発泡プラスチック系の断熱材の方が、熱伝導率が低い傾向にあります。
スタイロフォームに代表される押出法ポリスチレンフォームは、約0.022 W/m Kと熱伝導率が最も低く、発泡ウレタンボードが約0.024 W/m Kと続きます。
無機繊維系のグラスウールやロックウールの熱伝導率は約0.038 W/m K、天然繊維系のセルロースファイバーと羊毛断熱材の熱伝導率は約0.040 W/m Kです。
わずかではありますが、繊維系よりプラスチック系の断熱材が断熱性に優れていることが分かります。
押出法ポリスチレンフォームは、グラスウールの約2倍の価格にはなりますが、断熱性能と価格のバランスがとれた断熱材といえるでしょう。
結露
住宅にとって大敵となるのが結露です。
窓の結露のように目に見えるものを「表面結露」といい、水蒸気が壁内部に浸透して引き起こす結露を「内部結露」といいます。
表面結露も困りますが、厄介なのが内部結露です。
内部結露は目に見えないところで発生し、柱などの構造体を腐らせていきます。
特定の断熱材を使えば結露しないということではなく、
・断熱材をすき間なく施工すること
・室内側に防湿層(気密シート)を設け、室内で発生する水蒸気が壁内部に浸透しないようにすること
この二つがポイントです。
断熱材のすき間を作らない為には、セルロースファイバーやウレタンフォームの吹き込み施工が向いています。
また、湿気を吸収・放出する機能を持つ、羊毛断熱材もおすすめです。
調湿性があるので、湿度が高めの日本に適している断熱材といえるでしょう。
これらは、グラスウールより2~4倍の価格にはなりますが、柱や構造体を守るための必要経費という考え方もあるのではないでしょうか。
おすすめの断熱材とは?
断熱材の選び方は何を重視するかで変わってくるので、これがおすすめとは一概には言えません。
また、家の構造や住んでいる地域、予算など、様々な条件で比較検討することも大切です。
一筋縄ではいかない断熱材選びですが、重視するポイント別の事例をご紹介します。
防音や吸音を重視する場合
住宅の防音や吸音の性能を上げたい場合は、繊維系の断熱材(セルロースファイバー、グラスウール、ロックウール、羊毛など)がおすすめです。
多孔質の素材は音が入ってくると、そのエネルギーを振動させて熱エネルギーに変換します。
繊維系の断熱材は、厚みが増すほど吸音性が高まるのが特徴です。
繊維自体に空気胞があること、加えて複雑に絡む繊維の空気層が高い吸音性を発揮するでしょう。
また、防音の上では窓の性能も重要です。
最近ではペアガラスも一般的に普及されてきていますが、防音性能を更に上げたいのであればトリプルガラスや木製サッシなどを検討すると良いでしょう。
燃えにくさを重視する場合
考えたくないことですが、万が一火災が起きた場合は少しでも早く安全に避難しなくてはなりません。
火災で怖いと言われている一つに黒煙がありますが、石油系物質を含む発泡ウレタンは燃えやすく、火災の際に黒煙と有毒なガスを発生させてしまいます。
反対に、黒煙や有毒ガスが発生しないのがセルロースファイバーです。
原料は古紙なので燃えるかと思いきや、ホウ酸を添加することで燃えにくい素材になっています。
また、同じく天然素材の羊毛も燃えにくい素材です。
発火温度は約600℃と高く、水分を含んでいる為、難燃性が高いと言われています。
まとめ
非常に難しい断熱材選び。
簡単には交換できないので慎重に選びたいですね。
また、どの断熱材を選んだとしても施工精度が重要で、窓や筋交い、コンセントボックス周辺にもすき間なく施工することが大切。
信頼できる工務店や業者さんに”自分の家にはどの断熱材がベストか”を相談し、丁寧に施工してもらえる会社を選ぶことが失敗しない秘訣です。